西瓜糖の世界で
2008-02-03-Sun-23:54
わたしが誰か、あなたは知りたいと思っていることだろう。
わたしはきまった名前を持たない人間のひとりだ。
あなたがわたしの名前をきめる。
あなたの心に浮かぶこと、それがわたしの名前なのだ。
たとえば、ずっと昔に起こったことについて考えていたりする。
__誰かがあなたに質問をしたのだけれど、
あなたはなんと答えてよいかわからなかった。
それがわたしの名前だ。
そう、もしかしたら、そのときはひどい雨降りだったかもしれない。
それがわたしの名前だ。
あるいは、誰かがあなたになにかをしろといった。あなたはいわれたようにした。
ところが、あなたのやりかたでは駄目だったといわれた。
__「ごめんな」__そして、あなたはやりなおした。
それがわたしの名前だ。
もしかしたら、子供のときした遊びのこととか、
あるいは歳をとってから窓辺の椅子に腰かけていたら、
ふと心に浮かんだことであるとか。
それがわたしの名前だ。
それとも、あなたはどこかまで歩いて行ったのだったか。
花がいちめんに咲いていた。
それがわたしの名前だ。
あるいは、あなたはじっと覗きこむようにして、川を見つめていたのかもしれない。
あなたが愛していた誰かが、すぐそばにいた。
あなたに触れようとしていた。
触れられるまえに、あなたにはもうその感じがわかった。
そして、それから、あなたに触れた。
それがわたしの名前だ。
「西瓜糖の日々」リチャード・ブローティガン
わたしはきまった名前を持たない人間のひとりだ。
あなたがわたしの名前をきめる。
あなたの心に浮かぶこと、それがわたしの名前なのだ。
たとえば、ずっと昔に起こったことについて考えていたりする。
__誰かがあなたに質問をしたのだけれど、
あなたはなんと答えてよいかわからなかった。
それがわたしの名前だ。
そう、もしかしたら、そのときはひどい雨降りだったかもしれない。
それがわたしの名前だ。
あるいは、誰かがあなたになにかをしろといった。あなたはいわれたようにした。
ところが、あなたのやりかたでは駄目だったといわれた。
__「ごめんな」__そして、あなたはやりなおした。
それがわたしの名前だ。
もしかしたら、子供のときした遊びのこととか、
あるいは歳をとってから窓辺の椅子に腰かけていたら、
ふと心に浮かんだことであるとか。
それがわたしの名前だ。
それとも、あなたはどこかまで歩いて行ったのだったか。
花がいちめんに咲いていた。
それがわたしの名前だ。
あるいは、あなたはじっと覗きこむようにして、川を見つめていたのかもしれない。
あなたが愛していた誰かが、すぐそばにいた。
あなたに触れようとしていた。
触れられるまえに、あなたにはもうその感じがわかった。
そして、それから、あなたに触れた。
それがわたしの名前だ。
「西瓜糖の日々」リチャード・ブローティガン

